「但馬の小京都」出石で140年ぶりの歴史的発見をしながら、その事実を町の人たちに打ち明けられず、悩んでいた人がいます。
今回の『激レアさん』に登場するのは町が観光名所として、日本最古をうたっていた時計台の歴史を調べて見たところ、
実際は日本で2番目に古い時計台だと証明してしまった渋谷朋矢さん。
町と時計台を愛するが故の悩みと歴史的発見につながった経過を調べて見ました。
渋谷朋矢さんってどんな人?
渋谷朋矢さんは地元で出石で「さらそば」のお店『甚兵衛』を営んでいるお蕎麦屋さんです。
地元ではかなりの有名店だそうですが、最近は観光客も減って自分のお店だけでなく出石自体がさみしくなっているのを残念に思っていました。
そこで、『辰鼓楼』が観光客寄せにならないかと思って調べ始めたのです。
【さらそば甚平衛】
・電話…0796-52-2185
・営業時間…11:00~18:00
・店休日…水曜日
辰鼓楼(しんころう)はいつからある?
兵庫県豊岡市出石町、出石城の石垣の上に建っている『辰鼓楼』は木造4層で高さ13メートルあります。
出石町の人たちの自慢であるこの時計台は、渋谷さんの自慢でもあり誇りでもありました。
『辰鼓楼』は1871年6月1日に完成。
城主の登城を太鼓をたたいて知らせていました。
そして、1881年に今の形の時計台になったのですが、詳しくはわかっていませんでした。
町は『辰鼓楼』は日本最古であるというけれど、証明するものはないだろうか?
渋谷さんは始めはそんな気持ちでした。
自分の町の自慢の物なら誰だってそう思いますよね。
そこで、渋谷さんは『辰鼓楼』について調べ始めました。
※『辰鼓楼』へのアクセス
・JR山陰本線八鹿駅から全但バス「出石」行、約30分。出石バス停下車徒歩15分。
・JR山陰本線京都丹後鉄道、豊岡駅から全但バス「出石」行、約30分。終点下車徒歩5分。
資料がない
ところが、町の自慢の『辰鼓楼』のはずなのに時を刻み始めた日にちの詳しい資料が見つからないのです。
町の歴史が書かれた「出石町史」にも、町の図書館の新聞にも、時計を寄贈した旧藩医・池口忠恕(いけぐちちゅうじょ)さんの子孫の方にも情報はのこっていませんでした。
さぞ、がっかりされたことだろうと思います。
渋谷さんは、どうしていいかわからなくなりましたが、それでも『辰鼓楼』がいつ時を刻み始めたのか探すことをやめませんでした。
自分が自慢に思っているものだからこそ、どうしても知りたかった渋谷さんの気持ちはよくわかります。
小学校の日誌に謎が解き明かされていた
出石の古い資料を片っ端から探していった渋谷さんは遂に、『辰鼓楼』が時を刻み始めたと書かれている文献を見つけました。
それは、元藩校である弘道小学校の日誌です。
そこには「1881年9月8日」と書かれていました。
日本で2番目に古い時計台だった
140年のなぞにたどり着いた渋谷さんはさぞかし嬉しかっただろうと普通であればだれもが思いますが、実はそうではなかったのです。
何故なら、札幌市の時計台の稼働開始は「1881年8月12日」
つまり、『辰鼓楼』は札幌時計台に遅れること27日。
日本で2番目に古い時計台だったからです。
誰にも言えない…悩んだ末の報告
町の誰もが日本一古い時計台として誇りに思っている『辰鼓楼』が実は日本で2番目だったなんて‼
事実を知った渋谷さんは、このことを町の人たちに報告するべきかどうか迷います。
そりゃそうですよね。
町の観光協会や兵庫県までもが日本最古の時計台をうたい、みんながそのことを自慢に思っているのですから…。
渋谷さんの気持ちは、事実を知った時から休まる時がなかったと思います。
隠してはいけない
でも、渋谷さんは自慢に思って誇りにしている時計台だからこそ、この事実を隠していてはいけないと考えます。
勇気を出して事実を伝えた渋谷さん。
町の人たちはどうだったのでしょう?
良く調べたね
町の人たちの反応は渋谷さんが思っていたのとは違いました。
調べた渋谷さんに対して賞賛とねぎらいの言葉がかかったのです。
なんて、素敵な出石の方たちなんでしょうか。
町の観光協会の会長さんはがっかりはしたそうですが、真実がわかってよかったとインタビューに答えていました。
悩んだ末の結論が周りの方たちに理解してもらえて本当に良かったと思います。
日本で2番目に古い時計台『辰鼓楼』
出石では早速、『日本で2番目に古い時計台』として『辰鼓楼』を紹介し始めました。
その、潔い態度と正直さがいろいろな人に称賛を浴びています。
渋谷さんの始めの思惑通り、観光名所として今まで以上に有名になっています。
きっと、観光が以前のようにいつでもどこへでも楽しく出かけられるような時が来たら、きっと『辰鼓楼』はたくさんの観光客でにぎわうことでしょう。
その時は、私も渋谷さんのお店『さらそば甚平衛』で、出石の味を堪能してみたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。