連載が53年を越し、単行本は202巻。誰もが一度は目にしたことがある『ゴルゴ13』
その生みの親である、さいとう・たかをさんが令和3年9月24日すい臓がんのために84歳の生涯を閉じられました。
さいとう・たかをさんは、劇画という漫画の世界を確立、開拓された先駆者です。
今日は、さいとう・たかをさんの人生と代表作『ゴルゴ13』の連載がなぜ続けられるのかについて調べて見ました。
さいとう・たかをさんのプロフィールと経歴
さいとう・たかをさんは1936年11月3日に5人兄弟の末っ子として和歌山県に生まれました。
生後間もなく大阪府堺市に移り住み、ここで母親が理髪店をしながら女手一つでさいとうさんら5人の子どもを育てます。
さいとうさんは図画とケンカが得意な不良少年でしたが、中学生の時には大阪府の絵画コンクールで金賞を受賞するなど、小さなころから絵に興味がありました。
しかし、さいとうさんの父親が画家や写真家などを目指しては失敗し、挙句には家庭を捨てて出奔したため、母親は極端に絵描きなどを嫌い、金賞を取った絵もさいとうさんの目の前で焼き捨ててしまったそうです。
さいとうさんのお母さんですから、年代的に、たぶん明治生まれの毅然とした芯の強い日本女性だったのでしょう。
自分の経験から、さいとうさんの絵の才能は受け入れられなかったのですね。
さいとう・たかをさんの漫画家としての初期
1952年に実家の理髪店をお姉さんと継ぎますが1956年に『空気男爵』でデビュー。
漫画家をするために、実家の理髪店をやめます。
このことで母親は激怒し、ついに亡くなるまで漫画家を嫌ったそうです。
さいとうさんは当初、漫画界のレジェンド手塚治虫さんに影響を受けて、手塚さんのような柔らかい作画でした。
何だか、柔らかい画風のさいとう・たかをさんってピンときませんね。
しかし、1950年後半から貸本漫画の看板作家として活躍を始め、徐々に劇画というジャンルと作風を確立させていきます。
貸本漫画を描いていたというのは、ゲゲゲの水木しげるさんと同じですね。
さいとう・プロダクションと漫画の分業体制
一般的に漫画は「先生」と呼ばれる原作者がいて、「先生」の作画を手助けするアシスタントが背景や細かな作業をします。
しかし、さいとうさんの漫画は違います。
さいとうプロダクションにいるスタッフがみんなで一つの漫画を描き上げていく、分業制です。
そのため、無理なく長期の連載をすることができるのです。
このさいとうさんの分業制は批判を受けることもありましたが、今では漫画という仕事のビジネスモデルとして確立されています。
ゴルゴ13の世界
超A級スナイパー『ゴルゴ13』
ゴルゴ13というのは漫画の中での通り名で、主人公の名まえはデュ₋ク東郷といいます。
この東郷という名まえは、さいとうさんの中学時代の恩師の名まえです。
中学生の時に、さいとうさんが答案を白紙で出した際に、「白紙で出すのは構わないが、提出する義務が君にはある」と言ってさいとうさんに答案用紙に名まえを書くように指導されたのだそうです。
このことに感銘を受けたさいとうさんは、何十年もあとに主人公の苗字に先生の名まえをお借りしたのだそうです。
ゴルゴ13の魅力
読んだ方はご存じだと思いますが、ゴルゴ13は1話ごとの読み切り。
少し前の歴史や社会問題に関わった内容で、デューク東郷がライフルで事件を解決することで完結します。
この、1話で読んでしまえるという手軽さと問題の解決がすっきりと決まった状態であることが人気が高いのではないでしょうか?
たまに、入るデュ-ク東郷の過去話などは一方向からの推測ではないし、真相に迫ろうとしたものは必ずゴルゴ13のライフルで消されるので、いつまでも憶測から出ないところが歯がゆくもありゴルゴ13のなぞを深めるところでもあります。
こち亀を抜く
『ゴルゴ13』は、2021年6月5日に201巻目を出版し、同一カテゴリーで最も発行巻数が多い単一漫画として世界ギネス記録に認定されました。
9月現在では202巻出ています。
これは2016年に認定された秋本治さんの『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を抜いたということです。
先ほども書きましたが、制作過程が分業制のため、今までに関わった脚本家は50人以上。
ストーリー数は600話、シリーズの累計発行部数は3億部を超えています。
素晴らしい偉業ですね。今後も、この記録を抜く漫画はなかなか出てくることはないと思います。
ゴルゴ13は永遠に続く?
普通は作家さんが亡くなると漫画はそこでストップ。話が続きものであった場合は読者の中でもやもやが残ります。
しかし、『ゴルゴ13』は今後も連載が続くことになっています。
これは、さいとうさんの遺志であることはもちろんなのですが、何よりも、さいとうさんが確立させた分業制である漫画の描き方が大きいと出版元の「ビックコミック」は言っています。
さいとう・たかをさんの残した言葉
『ゴルゴ13』が世界記録となった時にさいとうさんは
「私のものであると同時に読者の皆様の物でもあります。これからも一つ一つを丁寧に描いていきたいと思います」
とコメントされています。
さいとうさんが亡くなった今もその言葉は大切に守られ、今後もさいとうさんの残したビジネスモデルを基盤に成長していくのでしょう。
さいとう・たかをさんのご冥福を心からお祈りしています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。